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執筆者の写真junpei

与那国島



昨年、Zさんから送られて来た数枚の与那国島の写真。 それは朝日差す岬で、思い思いに草を食むのびのびした与那国馬たちの のどかで牧歌的な風景でした。 一度でいいから、ここへ行き、あの馬たちとふれあいたい。 そう漠然と思うようになりました。 ある時、一緒に山に行っていたNちゃんとそんな話をしていると 今年、一緒に行かないかとお誘いを受けました。 聞けば、Nちゃんは過去に何回も島に行った事のある、与那国島マスター。 二つ返事で承諾した後はNちゃん観光が全てを整えてくれ、私は身ひとつで リサーチも殆どなしに、おんぶにだっこで旅に出る事となりました。 折もあろうにかなり勢力の大きい台風が接近中で、このままの予報では、 どこかで必ずカンヅメになるであろうことが予測され、昨年の台風21号で 甚大な被害を受けた与那国島では全戸停電、しかも3日は復旧しなかったと のこと。 Nちゃんからはヘッドランプ持参の指令があり、最悪空港で寝る事になるか もしれないとのことで、私は更に山用のプープー枕を追加。 台風の状況如何では石垣から与那国へ飛ぶ事もままならない状況に陥るかも…? との懸念もありましたが、カンヅメになった時用に、ウクレレ、本3冊、ヤ マケイ2冊、絵の道具一式を携え万全の布陣で旅に出ました。 当日、羽田で落ち合い、まずは石垣島へ。 問題なく初日の宿、ペンション「やいま日和」へ到着。 石垣島の繁華街へ繰り出し、オリオンビールでまずは乾杯。翌朝与那国島 へと行けるよう祈りつつ、楽しい宴は過ぎて行きました。 二日目。いよいよ与那国へ向けて出発です。 どうやらフライトに問題はなさそうで、天気も上々!本当に台風がやってく るのか疑う程の良い天気です。 石垣からは小さいエアコミューターで25分。ついに与那国へ到着しました。 Nちゃんから色々事前に話を聞いていた、「優しくて面白くて、どことなく 我々の山の師匠Kさんに通ずるものをお持ち」だという宿の主M男さんが、 空港まで迎えに来て下さっていました。 久しぶりの再会に会話も弾むお二人。途中奥様がお務めの役場を経由し、 軽くご挨拶した後、4 日間お世話になる民宿「里家」へ到着です。 母屋とひと続きになったおうちの玄関を入り、2階へ。お部屋は全部で6室。 その一番奥の部屋をそれぞれに貸してくださいました。 里家のM男さん、Nちゃんから聞いていたこともあるのかもしれませんが、 初めてお会いしたとは思えない程フレンドリーで、宿というより親戚のおじ さんの家に遊びに来たという感覚。何だかもう既に心が癒されてます。 大型で非常に強い台風16号は、翌日昼〜15時頃に与那国島を通過するとの予 報で、天気が良いのは今日だけ…ということで、宿に着いて荷解きをする間 もなく、急いで出かける準備。 翌日の台風に備え、M男さんもご多分に漏れず大忙しとのことで、宿の車を 自由に使っても良いとのこと!本当に有り難い限りです。 ご好意に甘え、Nちゃんの運転で島内巡りへ。 まずは日本再西端の地、西崎。その後テキサスゲートを越え、いよいよ 東崎に到着。車を停め、灯台に向かって歩いて行くとまずは大きな牛が お出迎え。近寄って触ろうとしますが、やはりギリギリのところで何となく 逃げて行きます。更に歩を進めると、Zさんから送られてきたあの写真の風景 がそのまま目に飛び込んできました。 あーー!!いるいる!すぐにでも走り出したい気持ちを抑え、ゆっくりゆっ くり馬たちのそばへ近づきます。 子馬も沢山!お母さんのそばをピッタリくっついて離れません。 触ろうとすると、やはり野生なのでふいと顔を背け、離れていこうとします が、根気づよく鼻の前に手を差し伸べ、匂いをかがせます。 「怖くないよー。」と何度も声をかけ、じっくり時間をかけて匂いをかいで もらい、危険なヤツじゃないと認識してくれたっぽい…と感じたら、静かに 顔を触ります。 OK!!触らせてくれました。そのままゆっくり手を滑らせて今度は耳の後ろ へ。耳の後ろ側を掻いてあげます。やはり、これは必殺技!目がトロンとし てきて、耳が横に向けて垂れてきました。リラックスしている証拠です。 ここまでくると、どこを触っても大丈夫。ムツゴロウよろしく体中を撫で、 両手で顔を挟んで私の顔を近づけ、おでことおでこをくっつけ、愛撫!! あーーー!!!!本当に幸せ!!!! 野生の与那国馬とのふれあい、本当に心から癒されます。 かなり長い間、馬の群れの中で彼らと遊び続ける私。 たとえ何時間いてもおそらく、飽きることなどありえません。 群れの中をよく観察してみると、子馬は別として大人の馬は全て牝。牡はど こにいるのだろうと思って探してみると、遠く灯台の近くに3頭がじゃれあっ ています。近くまで寄って確認してみると、やはり全て牡。 御崎馬は1頭の牡と数頭の牝、そして子供というハーレムで過ごすというのは 聞いた事がありますが、やはりそれと似ているのかも。 その後スコールに追い立てられ、慌てて車に戻った後はテキサスゲートを越 え、南牧場へ。ここは純血の与那国馬ではなく、少し大きめの馬たちが群れ ているエリア。しかし、よく見てみると複数の馬たちの目がおかしい。どう やら何かの病気にかかっているらしくて、かなり可哀想な状況に。後から M男さんに聞いた話でも、あまり管理が行き届いていないらしいとのこと。 しかし、そんな状況にあるとは言え、彼らの生活は至って自由。 遠くの海を見つめる馬の姿は印象的でした。 次に恐ろしい歴史がある久部良バリへ。妊婦でなくともあの幅を飛び越え るなんて、到底ムリ。M男さんからは、人升田というこれまた恐ろしい話 も…。人頭税を免れるためとは言え、人間って恐ろしいことを考える生き 物だなぁ…とつくづく思います。 その後M男さんが管理しているDr.コトー診療所へ。診療所の前には美しい 浜が広がっており、暫し浜でのんびり過ごしましたが、またもスコールが やってきたので、慌てて宿へ。 すっかりずぶ濡れになってしまったので、シャワーを浴びに行ったのですが ここでひとつの事件が起きる事となりました(笑) 何の問題も無く、シャワーを浴び終え、さて水を止めようと蛇口を回したと ころ、「あれ?これどっち方向だったっけ…??」と、テキトーにくるくる 回しているうちに方向がよく分からなくなり、反対に回してしまったせいで 蛇口を外すという大失態!!!途端に勢い良くお湯がごぼごぼっ!!!と吹 き出し、かなりのパニックに。なんとか蛇口ははまったものの、完全に水は 止まらず…。 誰か助けてーーーーーー!!!!!! でも、素っ裸で助けを呼ぶ訳にも行かず、大慌てで着替え、外へ出て助けを 呼びますが、さっきまで夕飯の仕込みをしていた娘さんの姿も無く、台風 対策に追われるM男さんの工具の音は聞こえるが、姿は見えず、2階へ駆け 上り、最後はNちゃんに助けを求めました…。 お水の元栓がどこにあるかもわからず、とりあえずガスだけは止めた頃、M 男さんが現れ、びしょ濡れになりながら蛇口を直してくれました…!! ただでさえ台風の準備でお忙しいというのに、ほんとにろくな事をしない そそっかしい私のせいで大変ご迷惑をおかけしました…!!! そんな事件もありつつ、おいしい夜ご飯をたらふく頂き、その後はM男さん と一緒に泡盛で楽しい宴の始まりです。 怪我で水を抜いたばかりの私の話を聞き、同じく膝が悪くて初めて水を抜い た時のM男さんの話は、しょっぱなから涙が出る程面白くて、久しぶりに大 笑い。他にも、仕事で東京へ行った時に起きたという、第一ホテルバイキン グ話、飛行機トイレ話、更にM男さんに降り掛かった東京駅トイレ事件等、 M男さんの話芸はとにかく素晴らしくて、全ての逸話にもれなく大爆笑なの でした! そんな中、途中M男さんと仲良しの警察官Tさんが立寄られ、暫し一緒にお話 しました。 台風対策でその後も仕事だとおっしゃっており、途中携帯にかかってきた 一人暮らしのおばあの電話に、「まだ早いから!!おれが11時になったら 迎えに行くから、それまで待ってろ!!」と親身になって対応。 聞けば早い時間に避難したのはいいものの、だんだん疲れてきて、一番風雨 の強い時に家に帰ると言い出すので、早すぎる避難は考えものなのだとか。 なるほどー…。それにしても、こうやって1人の警察官の方が、個人的にお ばあからの電話を受けてくれるなんて、島ならではというのか、心の交流が できていていい話だなあ。と感じました。 その後はM男さん自作の木製三線(本当に器用!)と唄で癒され、本当に台 風が近づいているのか?と思う程静かに夜は更けて行きました。 翌朝4時頃に、予告されていた通り、私の部屋の窓に台風対策の板をはめ込み に来て下さったM男さん。景色が見えなくなるからと、おそらく昼間は半分ま でで様子を見ていたと思われるその板ですが、私が起きないようにベランダ側 からソローっとはめて下さっている優しい心遣いに心から感謝しつつ、更に その後一眠り。7時に起きた頃にはかなり外は荒れ模様となっていました。 朝食をとっている間も、途中プツプツと電気が途切れつつあり、なんとなく 嫌な雰囲気を醸し出していましたが、食後に母屋の1階でコーヒーを頂いて くつろいでいたところ、突然プツッと全ての電気が消えました。 「あっ!!停電…??」やはりそれっきり電気はつかず、案外あっけなく停 電してしまうものなんだなぁ…と妙な感心をしつつも、更に激しさを増す 風雨にだんだん不安な気持ちに。まるでお水の中に家ごと入ってしまったか のように、大量の雨が窓に叩き付け、大きな大木がまるで海の中の海藻の如 くぐにゃぐにゃと踊り狂っています。 そんな中でも、M男さんは梯子をかけ、屋根に登り土嚢を積み上げていて、 なんて働き者なんだろう…と感動すら覚える有様でした。 この日一日は完全に巣ごもり状態。比較的明るいNちゃんのお部屋に移り、 絵を描き、お昼はみんなでカップラーメンを食べ、また絵を描き、ウクレレ を弾き、本を読む…。そうこうしているうちに台風は遠ざかり、夜を迎えま した。お水シャワーでさっぱりした後は、電気も使えないというのにおいし い夕飯を作って下さった皆様。状況は厳しいとはいえ、キャンドルライト の下での夕飯はなかなか素敵な雰囲気。おいしいご飯を食べ終え、暫しくつ ろいでいた19時過ぎのこと。突如として電気が付きました!! 思わず二人で拍手!! ほぼ徹夜で大変な一日を過ごしたM男さんは目が真っ赤。さすがに今日は お疲れだと思い、二人で宴はご遠慮しようと思っていましたが、M男さんが 寂し気な顔をしたので、お疲れなのに申し訳ないと思いつつもついつい飲ん でしまいました(笑) 前日よりは早い時間に就寝で、激動三日目は終了となりました。 台風は過ぎ去ったものの、未だ波は高く、風もそこそこ吹いているような状 態。辺りを散策しがてら、コトーの浜まで行ってみると、やはりかなりの被 害。みんな誰しも台風の後片付けに追われていました。我々はその日レンタ カーを借りて島内を巡る事に。ティンダハナタから再び東崎へ様子を見に 行ってみると、みんな元気に草を食べたりごろんとしたりと至って平和。 あの台風にも負けず、屋外で過ごすなんて、野生とはいえどさすがにたくま しい限り。 台風の後片付けで殆どのお店が休業で、頼みの綱で空港へ行ってみると、 同じような昼食難民がチラホラ。こんな大変なさなかに、M男さんちゃっか りお店開いてたりして…と宿へ戻ってみると、なんと想像通りでしっかり 開店。お店はお客さんで溢れていました。結局私達もその恩恵にあやかって おいしいおそばを頂き、北牧場へと向かいました。 しかしその入口を探しますが、よくわからない…。 まるでジャングルのような険しい道を、半ばやぶこぎしながら進むも行き止 まりで戻ったり、結局わからず仕舞い。 途中何頭ものヤギが群れていた土管の城(ヤギ城とNちゃんが命名)を見つけ たのが唯一の収穫で、時間切れとなりました。 その日は与那国島最後の宴。生ビールでM男さんも交えて乾杯しながら最後 の宴が始まりました。しかし、この日M男さんは徹夜でおそばのスープを作 らねばならないとのこと!本当に毎日忙しくよく働くM男さんなのでした。 楽しい時間はあっという間に過ぎて行き、寂しいながらも最後の夜が終了。 さて、最後のチャンスということで朝5時半過ぎに起きた私達は、車を借りて いざ北牧場へと向かいました。 空港の滑走路ギリギリの道を歩く事およそ15分。途中シロサギの群れの中に いる牛たちと、馬たちの間を通り過ぎ、断崖絶壁の馬鼻崎へ出ました。 Zさんの言う通り、なかなかの絶景です。私達の与那国島の旅はこれにて完了。 宿に戻り、朝ご飯を食べて奥様とお別れ。M男さんに空港まで送って頂き、そこ でお別れとなりました。 お世話になった里家の皆様、お忙しい時に本当によくして頂き、 本当にありがとうございました!!! そして、念願の与那国馬とのふれあいを実現させてくれたNちゃん、 ほんとにありがとう!!! 思い出に残る、素敵な旅でした。 いつかまた、きっと遊びに行きます♪


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