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執筆者の写真junpei

前穂高岳〜奥穂高岳

更新日:8月1日







いよいよ今年の目標である、奥穂高岳に挑戦する時がやってきました。

本来ならばKさんも一緒に登るはずでしたが、諸事情により私たち二人だけでの山行となりました。

7月半ばまでは残雪がある為、吊尾根を通るのは危険。ということで、7月後半〜を考えていたところ、たまたま7月後半の週末はお休みできることに。平日休みの取りにくいNちゃんに合わせ、今回は週末に計画することで最終決定となりました。

しかし、登る時期が限られている北アルプス。週末ともなれば大混雑は避けられず、まずは山小屋を予約するのが最大の難関です。


予約開始日には早朝から二人揃ってweb予約に臨み、両日とも超焦りながらも予約に成功!なんと数分で満室となる勢いの中、取れたのが奇跡とも言うべき状況でした。

さて今回は仕事終わりに向かう為まずは便利な長野駅に前乗りし、上高地へ向かいます。

バスに揺られ3時間程。槍以来の上高地に到着です。

さすが観光地の上高地。人混みはかなりのもので、外国人の多いこと!!河童橋を過ぎ、岳沢方向の分岐を折れるまでの間、人の間を縫うようにして自然深勝路を進みます。

いよいよ登山道へと入っていきますが、暫くは歩きやすい道が続きます。やがて風穴ポイントまでやってきました。ここでお昼ご飯を食べ、一服です。天然クーラーの風はひんやり涼しく、ほっとする時間でした。ここまでで小屋まで半分の距離です。ゆっくりと高度を上げて行きますが、なかなか小屋は見えてきません。期待を裏切られること数回でようやく小屋が見えてきました。枯れ沢を渡り、少し石段を登ると岳沢小屋に到着!!


まずは初日の行程を無事に終了です。タイムもほぼコースタイム通り到着できました。

今回のこの厳しい山行に向けてちゃんと訓練登山を踏んで臨んだNちゃんとは反対に、連日の猛暑で気力が奪われ、ほぼぶっつけという事態になってしまった私。小屋までの2時間すらかなりの疲労で、本当に翌日の厳しい道を踏破できるのか、かなりの不安が襲います。

とは言え、まずは安着祝いということで身支度をし、小屋で受付です。

入口のところで私たちを観察している人がいるなぁと思っていたら、なんと小屋番さんでした。しかも、こちらが名乗る前に「Nさんですね?」と言われてビックリ。

「お昼は穂高岳山荘で食べる人が多いけど、お弁当はそのままということで良いですか?」とご親切にも聞いてくださったのですが、なんせどれだけ時間がかかるかわからない為、やはり予定通りお弁当をお願いし、部屋へと向かいました。やり取りで思ったのは、この小屋番さん、あの辛口ブログを書いている方ではないか?ということです。

事前にルートなどを調べている時に頻繁に出てきたのが、岳沢小屋に書かれたブログの数々。

特にこのブログを読むと、言ってることは当然です。そもそも、自らの力量を自身で判断できないこと自体、登る資格がないというもの。今回私たちが挑戦するルートも、難易度は高く、上級者コースです。グレード的に言えば、重太郎新道(岳沢小屋から前穂高岳まで)がDランク。吊尾根(前穂高岳から奥穂高岳)がEランクと長野県屈指の難易度にランク付けされているとのこと。

私たちも一応満を持してのこのコース選択。去年までに培った岩場の経験値からいけば、岩場の難易度自体はそれほど難しい内容ではないと考えました。残る懸念材料としては、距離が非常に長いこと。これは、出発時刻を早め、休憩を多く入れることでクリアできると判断。

ヤマヤから見れば一見しただけでヤバイ登山者か否かは瞬時にわかるものなのかもしれないので、もしかするとこの小屋番さん、受付前の私たちを観察しつつ値踏みしていたのでは??と勝手に推測してしまいました。何も咎められなかったということは、一応登るに値するレベルの人間だと認めてくれたということなのでしょうか(笑)。



さてさて、荷物整理をし、とりあえずはビールで安着祝いです。懸念されていた雨もとりあえずは降らず、本当にありがたい限り!

美味しいカレーバイキングの夕食をテラスで頂いた後は、翌日に備え早々に就寝となりました。




夜の間降った雨は、とりあえず上り、多少路面は濡れていましたがおそらく吊り尾根に到着する頃には乾いているだろうと思われました。




朝食のお弁当を食べ、薄暗い中ヘッドランプを付けながら4時半頃出発です。

歩き始めて暫くすると、ついに手を使って攀じ登るような岩場が出現してきました。ここでストックをしまいます。

岩場、岩場、岩場の連続。まさに岩場祭りです。上りだから良いものの、これを下るのは相当難易度が増すなぁ。と思いながら進みます。激しい急登ですが、振り返れば雲海から乗鞍岳と焼岳がのぞいていました。美しい景色です。歩き始めて約1時間。カモシカの立場に到着。上高地が遥か下の方に見え、右手には西穂高岳から続く国内最難関ルートが全て見えています。





ここからもまだまだ急な登りが続きます。二段の梯子を越え、鎖場を越え、やがて岳沢パノラマまでやってきました。天気も良く、本当に素晴らしい景色です。まだまだ急登は続きます。やがて雷鳥広場に到着。しかし、雷鳥は1羽もおらず。大分歩いてきましたが、まだまだ紀美子平は上の方です。このあと切れ落ちた岩場もあったりで、なかなかの高度感を味わいながら進みますが、急にこの辺りで登山以外の懸念材料のひとつだったある危険が身に迫ってきていました。


それは…。お腹が弱い私にとって死活問題であるトイレ問題。

予期せぬ時に、急にやってくるというこの恐ろしさ!


あれ…??も、もしや…。気のせいかも?…イヤ、どうやら気のせいではないようだ…。

…ヤバイ…。非常にヤバイ…。

…おなかがいたーーーーい!!!!

ついに来るものが来てしまったらしい…。

梯子を降りたところで、Nちゃんに、急変を告げます。


「ヤバイ!!!もう無理!!ここでするしかない!!」

毎度薬を飲んだりして気を付けていても、たまに危機が訪れるお腹の調子。

樹林帯ならまだしも、森林限界を超えた稜線上で、もしもそれが訪れたら!?と毎回不安に苛まれるのですが、ここのところずっと大丈夫だったので、今回もなんとか乗り切れると思っていたのですが…。

仕方ない。こうなったら、覚悟を決めるしかありません。


後ろから来たおじさまを一人やり過ごし、梯子の上でNちゃんには誰かが来たらストップしてもらうようお願いし、おじさまの姿が大分上に上がってから、岩場の陰の谷底に落ちそうな位の崖っぷちで事を致す羽目に…。

足場も崖っぷちなら、この状況も崖っぷち。

しかしながら、人間の尊厳を失うくらいならここでしてしまった方がマシ!!!

ずりずりと半分片足がずり落ちながら、この間隙を縫って素早く事を致すことに成功!!

バンザイ!!!

身支度している途中にNちゃんから

「もういいですか?」との声が。ヤバイ!!人が来たらしい!!

「ちょっと待ってーー!!」と声をかけ、急いで整え、セーーーーーーーーフ!!!

ひゃ〜!!Nちゃんが居なかったらどうなっていたことか!!

本当に間一髪で大惨事を免れました…。

危なかったーーーーー!!!

おそらく、これまでの登山人生(大袈裟)の中で、一番危うかったことに間違いありません(笑)



この場所を過ぎたらほとんど隠れる場所もないので、更なる惨劇が繰り広げられることになったと思うと、本当に不幸中の幸いだったとしか思えません。

あんな険しい岩場の陰でする人なんて、おそらくいないでしょう(笑)

これでもうトイレの心配はしなくて済むと思っただけで本当に気が楽になりました。


私にとっては死ぬか生きるかの大事件ですが、全くもって尾籠な話で申し訳ありません(笑)


さて、危機は無事に乗り越えたので、あとはとにかく頑張るだけです。

岩場を攀じ登り、どんどん上がっていくと、ようやく紀美子平に着きました!!

時間は7時半。

トイレ事件というトラブルもありながら、なんと標準コースタイム内で上がってこられたようです!

ここでザックをデポし、必要最低限のものをサブザックに入れ、前穂高岳に向けて出発です。ほぼ空身の為かなり足取りは軽いのですが、この道、なかなかです。難易度の高い岩場の連続で、これを下るのは怖いな…。と一抹の不安を覚えながらピークを目指して攀じ登ります。

ついに前穂高岳(3,090.5m)山頂へ到着しました!!





少しガスが出てきていて、槍はかすかに穂先が見える程度だったのが残念でしたが、奥穂からジャンダルム、西穂へ続く最難関ルートが全て見えています。富士山も見えていました。

なんと穂高岳山荘も見えています。

山頂に暫く滞在し、景色を堪能した後で紀美子平まで下って行きます。

思った通り、下りはなかなかのもので、途中手こずる箇所もいくつかありながら、なんとか紀美子平まで戻ってきました。ここで早めの昼食を取ります。

9時半。紀美子平を出発です。重太郎新道でかなり疲労がきていることから、吊尾根は慎重に歩かないと危険。左側はずっと切れ落ちた崖のままで、狭いトラバース道が続きます。途中なかなかの高度感ある岩場を通り過ぎつつ、ゆっくり進んで行きます。奥穂高岳がだんだん近いてくるにしたがって、攀じ登り系の険しい岩場が増えてきました。

途中奥穂から降りてきたおじさまからの、「あと少しですよ」との励ましの言葉をお守りに、残りの急登を頑張って登って行きます。空気が薄いせいか、すぐに息が切れます。肩で息をしながらゆっくりゆっくり上っていくと、鎖が見えてきました。山頂が近い印です。

1本目の長い鎖場を過ぎると、今度はルンゼ状の短めの鎖場。ここを越えると、南陵の頭へ到着。いよいよビクトリーロードが見えてきました。





そして、とうとう奥穂高岳(3,190m)山頂に到着です!!

時間もほぼコースタイムで歩いてこられたようです。

ガスの切間からすぐ目の前にあのジャンダルムが…!!ゴツゴツしていてメチャクチャカッコイイ!!よく見ると、ピークに人が。カメラ越しにズームしてみると、二人とも手を振っていました。スゴイなぁ…。私は見るだけで十分ですが、世の中には本当にスゴイ人たちが沢山いるのだなぁ。と感心します。

心ゆくまでジャンダルムを堪能した後は、穂高岳山荘まで下ります。やはり、最後の最後に出てくる鎖と梯子はなかなか難しくて、少し手こずりましたが、なんとか無事に到着!!

いやーー。ほんとにきつかった!!そして、よく頑張りました!!

受付を済ませ、お部屋に行ってみると、単独行のおばさまがお一人いらっしゃり、とてもフレンドリーな方で、重太郎新道経由で来た事をとても褒めてくださいました!でも、このおばさまもなかなかすごくて、涸沢から上り、ジャンダルムだけ登ってきたとのこと!!すごい!!

更に後から来たおばさまはもっとすごくて、重太郎から登ってきて、翌日は北穂周りで下山するとのこと。相当の強者らしく、北アルプスも相当の回数来ているっぽい口ぶりでした。

本当に、上を見たらキリがないくらいスゴイ人っていうのは大勢いるものです。

小屋の談話室で耳を澄ませて聞いていても、ジャンには何回、とか、大キレットが、とかすごい話をしている人が沢山いて、この辺りに来ている人たちは猛者ばっかりなのだなぁと改めて思いました。

夕食を済ませたあとは夕陽を見たいところでしたが、残念ながらガスは濃いまま。仕方なく早めの就寝となりました。

眠りが浅い中、強風が吹き荒ぶ音に少し恐怖しながら、4時に起床。残念ながらヤマテンの予報は外れ、かなり酷い雨が降っていました。

とりあえず朝ごはんのお弁当を食べ様子を見ますが、一向に晴れる気配がない為、仕方なく出発です。ザイテングラートさえ通り過ぎれば、なんとかなるはずです。

急な岩場を手も使いながら、慎重に下りて行きます。岩は雨に濡れて滑りやすく、ゆっくりゆっくり一歩一歩確かめながらの歩行。最後の鎖場は、オーバーハング気味の岩を越え、かなり遠い足場に一気に足をかけながらの少し難しい道。そこを越えると石畳状の登山道に変わり、暫く行くと涸沢小屋へ到着。

ここで大休止することにし、雨具を脱いで中へ入ります。Nちゃんはコーヒー。私はホットカルピスでゆっくりしました。休憩しているうちに雨は止んだようで、ここから1時間程頑張れば険しい登山道ともお別れです。

雨具をしまい身軽になり、足場も大分乾いてきたので順調に本谷橋へ。

この辺りまで来ると涸沢に泊まる人たちなのか、親子連れや外国人の団体を多く見かけました。立ち入り禁止区域にもずかずか入り込もうとしている中国人の団体に辟易しながら、ここで休憩。


ここから約1時間で横尾山荘へ到着しました。

お腹もすいたことから、ここで山菜うどんを食べ、あとはぶらぶら歩きです。

去年槍から帰ってきた時も、この横尾山荘から上高地までが地味にきつかったのですが、やはり穂高も同じで、ここからが地味にきつくて疲れる!!

ゆっくりゆっくり歩いて、次のポイント徳沢では珍しくソフトクリームを食べて休憩。

最後の力を振り絞り、明神を経て嘉門次小屋へ到着!!

以前三俣蓮華で出会った素敵なおじさまが、この嘉門次小屋がとても良いとおすすめしてくれたので、いつか泊まってみたいと思っていました。

上條嘉門次と言えば、日本近代登山の父、ウォルター・ウェストンの山案内人としてとても有名な方。上高地と言えば嘉門次と言っても過言ではないかも。

さてさて到着してみると大勢の観光客で沸いていてびっくり。しかも食堂とは一枚扉を隔てたところがお部屋になっていて、気の利かない中国人の後ろをようやくすり抜けて中へ。

それでも、お風呂に入れることは何より有難いこと!!疲れた体を癒しつつ、3日分の汚れを削ぎ落としようやくさっぱり生きた心地になりました。

その後外のベンチで祝杯をあげ、おいしい夕食を頂きました。





特に、囲炉裏で焼いたイワナのおいしかったこと!!

食事のあとで囲炉裏の火を見つめながら、二人で骨酒も頂き、贅沢な夜でした。

翌朝5時起床で朝のお弁当を頂き、小屋を後に。

1時間自然深勝路を歩き、河童橋を渡ると私たちが通ったところがしっかり見えていました。

重太郎新道からの吊尾根。そして奥穂。ジャンダルム。なんとも感慨深い景色なのでした。

こうして見ると、前穂高岳からの吊尾根もかなり上っているなぁと感じました。

この景色も見納めだと思うと、立ち去るのが勿体無いように思えてきます。

本当によく歩いたものです。

ついに、上高地に到着。

今回の過酷な前穂高岳から奥穂高岳の山行もこれにて終了。固い握手を交わし、お互いの労をねぎらいました。

その後新島々から松本に出て、かなり早い時間に自宅に到着。

長い山旅は無事に終了しました!!

Kさんからは、「これで上級者だね」とお墨付きももらい、少し誇らしい気持ちになれました。

Nちゃんのお陰で、今回も無事に帰ってくることができました!!

こんなハードなコースを二人だけで踏破できるようになった私たち。本当に成長したなぁと思います。

この経験を活かして、また次なる目標に向かって頑張ります。

Nちゃん、今回も本当にありがとうございました!!



【参考動画】重太郎新道と吊尾根ってこんなとこ








【今回の前穂高岳〜奥穂高岳登山記録】    

初日行動時間 2時間32分(標準タイム 2時間30分)  

■山行タイム 2時間20分

11:35 上高地 

12:25〜12:35 風穴 55(1’20)   

14:00 岳沢小屋 1’25(1’10)  


二日目行動時間 8時間(標準タイム 6時間10分)

■山行タイム 

4:30 岳沢小屋

7:30 紀美子平 3’00(3'00)   

8:07〜8 : 20 前穂高岳 37(30)

9:00〜9:30 紀美子平 40(20)

11 : 40〜11:55 奥穂高岳山頂 2’20(1’50)

12 : 30 穂高岳山荘 35(30) 


三日目行動時間 7時間45分(標準タイム 6時間30分)

■山行タイム

5:30 穂高岳山荘 

7:15〜7:50 涸沢小屋 2’15(2’10)  

9:17〜9:30 本谷橋 1’27(1'10)  

10 : 25〜10:50 横尾山荘 55(50)

11: 52〜12 :15 徳沢園 1'02(1’10)

13 : 05 明神館 50(1'00)

13:15 嘉門次小屋 10(10)


∴ 百名山記録 52/100   【丹沢山 奥白根山 筑波山 草津白根山 四阿山 浅間山   金峰山 瑞牆山 火打山 妙高山 大菩薩嶺 鳳凰三山  谷川岳  蓼科山  雲取山  八ヶ岳 常念岳 仙丈ヶ岳  甲斐駒ケ岳 赤城山 男体山 岩木山 富士山 美ヶ原 北岳 両神山  鳥海山 霧ヶ峰  那須岳  至仏山  安達太良山 木曽駒ケ岳 御嶽山 会津駒ケ岳  燧ケ岳 五竜岳 苗場山 平ヶ岳 間ノ岳 鷲羽岳 磐梯山 西吾妻山  薬師岳 乗鞍岳  立山  早池峰山 剱岳  槍ヶ岳 甲武信ヶ岳 武尊山 高妻山 穂高岳】 

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