2時半過ぎ、師匠がトイレに立ったのを境に、完全に目が覚めてしまった
私でしたが、少しでも多く眠ろうと努力してふとんに留まっていました。
やがて起床時間の3時半になったので、荷物をまとめ1階に降りました。
すると、昨夜から注目していた単独登山のきれいなお姉様が既に準備万端
で玄関にいました。
これはチャンスと思い、暫し会話をしたのですが、思っていた通り素敵な
方で、相当の熟練と思われる方でした。
1人で自炊している辺り、予想通り登山経験は豊富な様子で、妙高も幾度か
来ているとのこと。
鎖場があると聞いているので、それだけでびびっていると話すと、
鎖場、ちょっと長めだけど慎重に行けば大丈夫ですよ。と励ましてくれて、
私たちより先に火打山へと出発して行かれました。
さて、我々も荷物は小屋にデポして、必要最低限の荷物だけで火打山へと
出発です。予定通り4時でした。
真っ暗な道をヘッドランプの灯りだけを頼りに歩きます。
虫が寄ってくるし、足元も見にくくて非常に歩きにくいです。
そうこうするうちに、どんどん辺りは明るくなり、4時40分、日の出と
なりました。
ご来光を見るのにちょうど良い稜線へ出たので、写真を撮りまくりました。
ここでのロスは15分。
その後ライチョウ平5:11、火打山山頂へは5:45着で、標準タイムからは
ちょうど写真を撮った時間の15分押しということでまずまずのタイム。
ガスっていて眺望はイマイチでしたが、先に登っていたお姉さんと共に
20分程山頂で過ごして、私たちの方が先に山小屋へと下山しました。
天狗の庭に着いたのが7:25なので、ほぼ標準タイムでの下山でしたが、
お花を撮影したりしていたので、ここでちょっとロスもありました。
その後、朝食に間に合わない人の為のお弁当(レトルトの赤飯)を急いで
食べ、身支度を整え、出発は8時過ぎとなりました。
もともとの予定では7時には小屋を出発するはずだったので、1時間も
押しています。少し心配になりましたが、師匠はどこ吹く風。
予定は予定なんだから、いいんだよ。と言いますが、でもこれからが
登山本番です。本当に大丈夫なのでしょうか。
茶臼山を経て黒沢池ヒュッテに着いたのは9:30。本来は50分で着くところ
を、何故か40分も遅れて到着していたようです。
理由として考えられるのは、道がぬかるんでいて慎重にならざるを得ない
ところが沢山あったこと…くらいでしょうか。
ここからがいよいよまず最初の難所と踏んでいた、大倉乗越です。
まずは登りが続き、大倉乗越に到着したのが10:10。この区間は、標準
タイムから10分程遅れた程度。
しかし、ここからが一番懸念された崩落箇所の通過です。
一体どこが崩落したというのでしょうか。見通しのきく稜線に出たと思った
ら、そこが崩落箇所で、大木やら岩やらが流れて来ていて、もともとザレ場
である登山道は見事に破壊、崩落箇所を巻く形で降りて行かなければなりま
せんでした。
急場しのぎで道が付けられたようで、途中には大きなツルハシが残されて
おり、タイミング悪く妙高から下山してきた人達と対面通行になったりで
なかなかスリル満点です。
師匠の言うような「迅速かつ慎重に」という矛盾した歩き方は到底無理で、
全てが浮き石のように感じられるその道無き道を、ドキドキしながらソロリ
ソロリと歩くしかなく、冷や汗を背中に感じながらなんとか崩落箇所を通過
して、長助池分岐までやってきました。
この分岐に着いた時間が定かではないのですが、崩落箇所があったので
慎重にならざるを得なかった事を考えると、おそらく標準タイムから倍近く
かかったかもしれません。おそらく11時過ぎから11:15前後の時間だった
のではないかと推測されます。
ここで暫し休憩をしていると、頂上から下山して来たおじさんグループが
到着しました。あのK村さん行方不明事件のおじさん達だと思います。
この中の、誰が一体K村さんなのだろう…と思っていると、こっから先の
急登は相当だとおじさんが脅します。でも、大倉乗越を通るより、登りの
方が何倍も気持ちが楽です。
しかし確かにこの急登、きつそうです。1/25000の地図で確認したところ、
およそ400mの急登なのですが、どこかの山と似ています。
そう、雪の奥白根へ行った時の、スキー場から外山というコルまでの450m
程の急登を彷彿させる等高線です。
私はあそこを登ったのだ!と、気持ちを奮い立たせ、いざ頂上へと向かい
ます。
さすがみんながキツイと言うだけの登りではありました。
沢なので当然岩場が多く、急登は当然です。瑞牆山の急登を思い出しまし
た。ストックを手にぶら下げ岩を手がかりにして登って行きます。
しかし、私はやはりどんなにきつくても、登りの方が好きです。
下りはいろんな事に注意を払わねばならないし、何より怖い…。
順調に高度を稼ぎ、山頂に着いたのは13:15でした。
おそらく、それ程遅いペースではなかったと思われるので、ほぼ標準タイム
か、遅くとも15分くらいのロスがあったと考えれば、分岐を出発したのは
11時半頃だったかもしれません。
ここで師匠が湧かしてくれたお湯でカップラーメンを食べ、1時間くらいの
休憩を取りました。出発したのは14:20です。
頂上からほど近いところには、私たちが一番懸念していた鎖場があります。
事前学習したところによると、かなり長い鎖場ではあるが、足場が切って
あり、比較的易しいとの記述。
でも、なかなかそれらしい鎖場は出てこない代わりに、かなり急な下りは
いくつもあって、後ろ向きにならないと降りられないところもあった為、
師匠が「もう鎖場過ぎたんじゃない?Jちゃんがあんまり鎖場鎖場って言う
から出てこないと大変だと思ってたけど、もう過ぎたよ」とか言う始末。
いや、絶対あるはずだ。しかも、50m近くの長いヤツが…。とは思いまし
たが、なかなか出てくるはずの鎖場が出てこないため、一旦しまったストッ
クをもう一度出して、下りに備えました。ストックを出してから数分、
師匠が「あったわーーー」と言いました。
やっぱり…!!!ないわけないよなー。とは思ってましたが、ここで
ようやく来たか…。出したばかりのストックを再度しまい、いよいよ
鎖場に挑戦です。下をのぞくと、頭がクラクラします。
後ろ向きで降りなければいけないことは、よくよくわかっているのですが、
次の足場をどこにすれば良いのかが全くわかりません。そうすると、つい
つい横向きで下の足場を確認したくなります。
何度も師匠に注意されながらも、なんとか下まで降りきりました…。
昔だったら、足がすくんで何も出来なかったかもしれませんが、意外にも
これくらいならなんとかなるかも。と思えただけでも、かなりの成長を
感じた瞬間でした。
そこが一番の難所だと思ってはいましたが、まだまだ急な下りは続いていま
す。
危険なところも沢山ありました。その度に、気を緩めるな!と言い聞かせ、
声に出して「一歩一歩、確実に!」と言いながら慎重に下りました。
天狗堂を過ぎてから分岐に着くまでの間も、ずっと気を緩める事のできない
かなり険しい難しい下りが続きました。とにかく足場が悪く、慎重にしか
下りられないし、地面が粘土質でとにかく滑る!
本当に恐ろしかったです…。
下りても下りても、分岐には着かず、険しい急坂と、崖っぷちに付けられた
足幅しかない巻き道がこれでもかというくらい続きました。
ようやく着いた分岐の標識が、どれだけ嬉しかったかわかりません。
しかし、結局通りたかった分岐から北側の道をどう間違えたか南側の道に
来ている事が判明し、コンクリートの道が始まった時には、歩きづらくて
疲れた足に更に追い打ちをかけるかのように、疲労度がアップしていきまし
た。
あと少しで日暮れ、本日2度目のヘッドランプか…!!??と危ぶまれた
ものの、なんとか寸でのところで燕温泉に到着!時間はなんと18:30。
標準タイムからは40分ほど遅れての到着。
行動時間14時間半という、壮絶な登山が終了しました。
これで私にとっては百名山も10座制覇ということになりました。
前日に宿に日帰り温泉の確認をしたのが遠い昔の事のようでしたが、
とりあえず温泉をお願いしようと思い、玄関で声をかけました。
すると、腰の曲がったおばあちゃまがいらっしゃり、私たちの格好を見て
労をねぎらって下さいました。
「まあ…えらいことです。」を連発し、「私も若い時は山に登りたいと
思っていましたけどねぇ、できないまま終わってしまいました…」
いや、まだ終わってないよ。とは思いましたが、確かに今からでは
もう無理かしら…。
疲労困憊で倒れそうな私たちをみるに見かねたのか、男性400円、
女性500円のところを、全員400円におまけしてくれました。
お風呂で体を癒し、二日分の垢を落とし、そこから約2時間の車の旅を経て、
お疲れの運転手様だった師匠を労うべく、宴の準備にかかりました。
簡単な料理を作り、壮絶登山の打上げが始まり、2時近くまで(?)、記憶
が無くなる程よく呑みました…!!
総括!
大概標準タイム通りか、それ以内で今まで歩けていたので、今回もその
ようにいくだろうという考えでいましたが、やはり標準タイムはあくまで
標準タイムであること、また、長時間の登山が予想される際は、ポイント
毎のロスは心配する程でもなくても、加算され、最終的には相当のロスを
生じる危険性があることをよく頭に入れておく必要があること。
これらのことは本当に重要なので、今後の登山に生かさなければならない
なぁ。と、肝に命じた今回の登山でした。
それにしても、14時間半という拷問のような山行きとはなりましたが、
案外まだまだ元気で、結構体力あるなあ…と我ながら感動しました。
とにかく、ど根性だけはあるということが、これで証明されたわけです…。
終わってみれば、なんだか色々あって面白い登山だったと思うし、
何より怪我なく帰ってこられた事が奇跡です…!!
安全な登山に導いて下さった師匠、疲れても、気持ちが折れる事も無く、
最後まで楽しい登山にしてくれたNちゃん、
本当にありがとうございました!!
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